前回は、市場の予測をして、当たったら大きなリターンを得る戦略ではなく、市場がどちらに転んでも、コンスタントに『そこそこの』リターンを得られるようなポートフォリオを組みましょうとお伝えしました。
それが一発屋で終わらず、長期に渡り、よい安全に、より堅実に、資産を形成する近道です。
今回は、そういったポートフォリオの組み方をお届けします。
投資の手始めは、まずは市場全体にエクスポージャーを持つこと(買うこと)です。では、どの市場が良いかというと、リスクの小さい方から順番に買っていきます。
例えば、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式、という具合です。
そして、各市場を買うには、パッシブファンドとアクティブファンドという選択肢があります。パッシブファンドは、例えば市場の代表インデックスである日経平均の構成銘柄と全く同じ銘柄を組み入れ、日経平均と連動して動くファンドのことを言います。
アクティブファンドとは、日経平均の構成銘柄の中から、幾つかの銘柄を選別して組み込むファンドで、当然のことながら、インデックスである日経平均とは異なるパフォーマンスになります。
市場全体を買う場合、パッシブファンドを一つ買えば済むのですが、ここで、もう一つ別の選択肢も存在します。
それは、市場を分断したアクティブファンドを二つ買うことで市場全体にエクスポージャーを持つ、というものです。
例えば、バリューファンドとグロースファンドを両方買います。バリューファンドとは、PERなどバリュエーション指標で見て割安度合いが強い銘柄で構成されたファンドで、グロースファンドは、割安度合いが弱いけれども、将来の成長性が見込める銘柄で構成されたファンドです。
バリューファンドにも様々なものがあり、それぞれ銘柄選定方法が異なり、どういった指標を元にどういった分析を行って銘柄を選別するかはポートフォリオマネージャーの腕の見せ所です。
優れたバリューファンドと優れたグロースファンドを持っていれば、バリュー相場の時には優れたバリューファンドが日経平均のみならず、スタイルインデックスであるバリューインデックスを凌駕し、グロース相場の時には優れたグロースファンドが市場平均のみならず、グロースインデックスをも凌駕する。数期が終わってみると、ポートフォリオ全体で日経平均より高いパフォーマンスを上げることが可能になります。
また、優れたポートフォリオ・マネージャーがどんな時にどんなニュースに反応して何を買い、どんな時に何を根拠に何を売っているのかを観察することも、相場感を養い、分析力を高めることに役立ちます。
そうこうしているうちに、自分でも個別銘柄を売買するための力が備わってきます。いきなり個別銘柄投資をする方に上手く行かないケースが多いのは、この、相場感や分析力が培われていないのに、投資を行ってしまっていることが原因です。
自分に相場感や分析力がない場合、何を根拠に銘柄を選定し、売買タイミングを決められるのでしょうか。他人に頼るしかなくなります。
噂話だったり、ネットで著名なアナリストが推奨していることを、わけもわからず、その人が言うから、という理由だけで信じて、自分の資産状況(耐えうるリスク・リターン特性)に合わない投資先に資金を投入したりしてしまいます。
年金基金など、機関投資家は、自社の構成員の年齢構成等によって、リスク許容度に応じたリスク上限を、運用者にオーダーし、運用者はその上限を上回らないようにリスクを取ります。なので、クライアント毎にとれるリスクは異なります。
個人投資家がこれをしないのは、なぜでしょう。20代の貯蓄があまりないけど将来が長い若者と、50代の財産はあるけど働ける年数が限られている人とでは、取れるリスクが異なります。
投資は自己責任です。自分で分析できないもの、わからないものに、手を出さないこと。そして、自分が取れるリスク許容度を知って、それに合ったポートフォリオを構築することが必要です。これが、投資でコンスタントに安定したプラスのリターンを上げるために、忘れてはならない鉄則です。
リターンは『そこそこ』でも、長期に渡り「安定した」リターンを上げていた方が、大きく上下するより結果的に高いリターンを享受することができます。
個人投資家は短期ではプロ投資家にほぼ勝てませんが、プロ投資家の弱みは、四半期ごとにリターン(結果)を出さなければいけないこと。その縛りがない個人投資家は、「長期に渡り安定したリターン」を上げるという点においては、プロ投資家に比べ有利です。
パッシブから始めて、次にアクティブ二つの組み合わせで市場全体へのエクスポージャーを持つ。そういった選択肢を取ることで、分散を効かせてリスクを抑えることができ、市場平均(インデックス)より少しだけ高い、しかも安定したパフォーマスを狙うことができます。
投資経験が浅い(年数が長くても、他人任せの銘柄選択をしてきた人は投資経験無しと一緒です)方も、自分のポートフォリオを見直して、上記のような構成にすることを考えてみましょう。
そうやって、楽しく相場感を磨いて行きたいですね。
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