こんにちは。ミッション・ミッケ人生デザイン研究所、研究員の井上翔太です。
今回は個人投資家の投資入門編の金融商品ともいえるパッシブファンドについてお話ししたいと思います。
パッシブファンドとは?
アクティブファンドとの比較(投資効率)
アクティブファンドとの比較(長期間保有)
アクティブファンドとの比較(手数料)
パッシブファンドの見分け方
(動画解説)投資効率の調べ方
目次
とある指標に連動するように設計されたファンド(投資信託)です。連動することを目的に作られているので、指標が上がればそのパッシブファンドの基準価格も同じ分だけ上昇し、指標が下がれば同じ分だけ下落します。日本株式の場合は、その指標は東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価が採用されているものが多いです。代表的なものにはインデックスファンドやETFがあります。
それと対照的なファンドとしてアクティブファンドというものもあります。これは、指標を上回るように設計されたファンドです。指標が上がればそのアクティブファンドの基準価格はそれ以上に上昇し、指標が下がれば指標の下げ分より小さい下落にとどめる(もしくは上昇する)ことを目指しています。
パッシブファンド、アクティブファンドに限らず、金融資産への投資における判断で重要なのは「リターンの大きさ」ではなく「投資効率」です。ここで言う効率とは、リスク(価格のブレ幅)の大きさに比べてどれだけリターン(収益率)を得られたか、という点です。それはシャープレシオという数値によって表現されます。
そこで、パッシブファンドとアクティブファンド両者の投資効率を比較するために、両者の2014年5月から2017年5月までの3年間の年率シャープレシオの平均値を比較してみました。調査対象はMORNINGSTARで検索可能な国内株式に投資をする全投資信託です(パッシブファンド79本、アクティブファンド474本)。
パッシブファンドとアクティブファンドの平均シャープレシオ比較
出所:MORNINGSTAR 著者調べ(2017年5月までの3年間の年率シャープレシオ)
パッシブファンドより、アクティブファンドの方が良い成績ですが、その差はわずか0.02です。パッシブファンドに比べて、より多くのリスクとより多くの投資コスト(後述)を費やしてまで得られる差が、この程度だというのは意外ですね。
しかし、アクティブファンドは474本もあるので、その中でも優秀なファンドを選別して投資すれば、パッシブファンドよりも圧倒的に良いシャープレシオで投資が出来るのではないか、と考える方もいるかもしれません。それでは次に、その優秀なアクティブファンドを見てみましょう。
優秀なアクティブファンドの実績は、同じくMORNINGSTARに載っている「シャープレシオランキング(国内株式)」を採用して説明します。
アクティブファンド シャープレシオTOP20ランキング
出所:MORNINGSTAR 著者調べ(2017年5月7日までの3年間)
それによると、過去1年間のシャープレシオが優れていた上位20位までのアクティブファンドの平均値は3.01と高水準にあります。この数値だけ見ると確かにパッシブファンドの0.58を圧倒しており、投資効率が良いのは優秀なアクティブファンドに軍配が上がります。
しかし、対象期間を3年間として、同じようにシャープレシオが優れていた上位20位までのアクティブファンドの平均値を見ると、1.58と半減し、さらに期間を10年まで延ばすと0.41まで下がります。ちなみに、パッシブファンドは期間が変わろうともシャープレシオに大きな変化は無く、0.56~0.58を維持しています。これがポイントの1つ目です。期間が長くなればなるほど両者の値は同等、もしくはパッシブファンドの方が優れた値になります。
次に、1年間と3年間のランキングの内容(銘柄)を見ると、両ランキング共通でランクインしている銘柄は4銘柄のみとなっています。これは3年間優秀なシャープレシオを出し続けたアクティブファンドは、474銘柄中4銘柄しかないことを意味しています。同じくランキング期間を10年まで延ばすと2銘柄しか残りません。これがポイントの2つ目です。長期で投資をする場合、この2銘柄を探し出して投資をする必要があります。
個人投資家がこの2銘柄を探し出すのは至難の業。長期間安定して投資効率を出す、という観点においてはパッシブファンドに軍配が上がりそうです。
最後に投資手数料の比較です。これも良く言われる議論ですが、アクティブファンドはパッシブファンドよりも投資コスト(費用)がかかります。主なものは信託報酬と購入時手数料です。
パッシブファンドの多くは信託報酬が0.19~0.4%、購入時手数料は0円であるのに対し、アクティブファンドは、上記のシャープレシオTOP20銘柄の平均でも、信託報酬1.63~2.34%、購入時手数料は、2.16~3.24%程度の費用が発生します。
これらの費用は、直接的に証券会社に支払う費用ということだけに着目されがちですが、実はそれ以上に長期投資の醍醐味である複利効果も押し下げる要因となることが、押さえておきたいポイントになります。
詳細はこのサイトを参考にすると良いと思います(http://investment-by-index-invest.com/trust-fee/)。
ネット証券のホームページのファンド検索画面では「パッシブファンド」もしくは「インデックスファンド」という検索条件があると思いますので、探すのはそんなに難しくないと思います。しかし、一番確実なのはそのファンドの交付目論見書を確認することです。例として、以下の2つを見てみましょう。
出所:アセットマネジメントOne 「たわらノーロード TOPIX」交付目論見書
出所:野村證券 「ノムラ日本株戦略ファンド」交付目論見書
どちらがパッシブファンドかわかりますよね?前者はTOPIXの動きに「連動する」、と明記され、後者は市場全体を「上回る」とあります。この文言で判断が出来ると思います。交付目論見書の中では明示的に「パッシブ型」と明記されている場合もあります。
・パッシブファンドは指標に連動した成績を出すことを目的に設計されたファンド(投資信託)。
・パッシブファンドとアクティブファンドのシャープレシオ(平均)の差は、投資コストを考慮すると割に合わない。
・優秀なアクティブファンドであっても運用期間が延びるほどシャープレシオが低くなり、10年で見るとパッシブファンド以下となる。つまり、直近の期待リターンは、長期投資をするに当たっては、参考とならない数値の可能性が高い。
・3年以上優秀なシャープレシオを維持するアクティブファンドは474銘柄中4銘柄。つまり、時期によって活躍するアクティブファンドは移り変わる。
・投資コスト(信託報酬、購入時手数料)の差は、長期投資の醍醐味である複利効果も押し下げる要因となる。
ただし、上記の事実があったとしても、パッシブファンドがアクティブファンドより優れている投資対象である、またはその逆であるとは、言い切れません。優秀なアクティブファンドも存在するため、それらをうまく選別し、投資すれば、パッシブファンドより好成績をあげることはできると思います。
特にトランプ大統領当選後、セクター毎や銘柄毎の動きに違いが出て来ており、優れたアクティブファンドは市場全体のリターンを大きく上回る可能性がこれまでより高まって来ています。
また、アクティブファンドの場合、運用期間が延びる以外にも運用成績が悪くなる要素が多くあります。アクティブファンドはテーマに絞ったものが多いため、地政学リスクや為替等、特定のリスクに晒されている度合いは、パッシブファンドより強くなります。その場合、為替ヘッジを付けたり、ポートフォリオ全体として取っているリスクを考慮して投資する等の対策が必要になります。
パッシブファンド、アクティブファンドどちらに投資するにせよ、大切なのは、これらの情報を経て、「リスク」と「期待リターン」双方を自分なりに納得し、戦略を立てたうえでどう投資行動をするか、という点にあります。当研究所では、それらに必要な投資情報を今後も提供していきたいと思います。次回もご期待ください。
最後に、MORNINGSTARでシャープレシオを調べる方法をご紹介しますので参考にしてください。
動画①:パッシブファンドのシャープレシオの表示方法
動画②:シャープレシオランキングの表示方法
サラリーマンとして会社の中でいかに生産性を上げて成果を出していくか、そして自分の人生をいかに輝けるものにするか、ということをリーダーシップという観点で研究し、多くの人に展開している。好きな映画はStarWars、MARVEL、007。3児のパパ。
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