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2016
11月23日

長期・国際分散投資家の資産運用

長期・国際分散投資家の資産運用
こんにちは! (株)ミッション・ミッケ人生デザイン研究所の高衣紗彩です。

皆さんご存知の通り、トランプ氏が当選してから、株式市場は上昇が加速し、ドル円相場では円安(同110円台)が進んでいます。これは、ざっくり言うと、市場の焦点が一転して「トランプ大統領」に率いられる米国経済のデメリットからメリットに変わったことが原因です。

一転した背景には、トランプ氏自身が大統領として真摯に取り組む姿勢や、過激な政策に微修正を加える姿勢を見せたことで、過度に心配警戒していた市場が「心配したほどではないかも」との安堵感を得たことがあります。

この上昇相場を受けて、巷には、『一転』を表現する言葉が登場してきています。

ゲームチェンジ、ターニング・ポイント、オールチェンジ、リセット・・・。

そして、週末の日経ヴェリタスには、「一日10円で円安が進む。このままだと1ヶ月後には30円の円安になる。」 との銀行の通貨ストラテジストの言葉が紹介されています。また、「年末には日経平均20,000円!」を予測する声や、「アベノミクスに乗れなかった人、大きく稼ぐチャンス!」などの記事も出てきています。某大手証券会社では、米大統領選挙の当日に下方修正した年末の日経平均予測を、翌日には大幅上方修正に変えました。

これらは、「今の動きがこのまま続く」との想定を元にしたものです。今の動きの延長線を予測するー。これであれば、素人でもできます(^^;)。確かに、相場には「モメンタム=弾み、勢い」というものがあり、一旦弾みが付くと、追随する者が現れるために(上がり出した、買おう!というトレーダー筋)、その方向性に勢いがつくことがあります。

なので、テクニカル手法を用いるプロのファンド・マネージャーの中には、コンピューターに上場企業の値動きを毎日インプットして(もちろん自動で)、毎週何パーセントの上昇を何週間続けたら「買い」というプログラムを組み立てている人たちもいます。それでやっていけているということは、それで結果が出せているということです。

ですが、だからと言って、個人投資家がそのまま真似できるわけではありません。彼らは、あることをわかってやっています。それは、

「自分たちは、ファンダメンタルズから離れていく方向に短期的にベットしている(賭けている)」

ということです。

短期狙いのトレーディングなのか、長期投資なのか?

「短期的に一方向に賭けている」んです。「あくまで短期ベット」と自覚して投資し、いつか相場がファンダメンタルズへと回帰を始めた時には、その兆候を即座にコンピューターで捉えて、反対売買をするシステムになっているのです。

反転の兆候を誰よりも早くシステムに導入する、そこに多額の設備投資を行なっています。だからこそ、取れる手法なのです。個人投資家の私たちは、「これはファンダメンタルズから離れていく方向にベットする短期的な賭けである」と自覚して投資ができているでしょうか。

もっと言うと、これは、投資ではなく、トレーディングです。トレーディングにはトレーディングのスキルを身につけなければ結果は出せません。そこも混同して、「トランプ大丈夫そう」=> 円安株高期待 => 買い、と短絡的に、「今がチャンスですよね。私も投資を始めたんです。」となってしまうと、カモネギになってしまいます。

相場は中長期的にはファンダメンタルズを反映した水準に回帰します。「勢い」で付けた相場は、「行き過ぎ」となり、どこかでファンダメンタルズを織り込み、反転します。長期安定投資家としては、この上昇し続けそうに見える相場で、安易に「買い」に向かうことは賢明ではありません。

自分は、短期の値動きでリターンを取ろうとするトレーディングを行なっていくのか、短期の値動きを乗り越えて中長期的に資産を増やしていこうとする「長期投資」を行なっていくのか、をしっかり自覚し、それに合った戦略を取らないと、良い結果は得られません。

「投資を始めて3年になりますが、まだ結果は出ていません」といった声を耳にしますが、聞いてみると、短期のトレーディングのポジションを取っていたりします。これは、知識がないだけの話なので、知識さえ得れば修正できます。

「あなたも勉強しなくても投資ができます。」「これはチャンスです!」といった、この局面であなたから儲けようとする人のポジション・トークに引っかからないようにしてくださいね。

今のこの相場は、どこまで続くのか

では、今のこの相場は、どこまで続くのでしょうか。その問いに答えるには、まず、「今の価格と現実(ファンダメンタルズ)のギャップを見る」ことが必要です。現実を詳細に分析するには、本来ならば、企業業績や経済指標の分析をしなければなりませんが、本業を持っている私たちにはそこまではできませんよね。

そこまでできなくても、今の相場状況と今後の見通しをある程度見極めることはできます。それには、スマートゲス(賢く推測する)、と呼ばれる手法を用います。これは、推測は推測ですが、直感で推測するのではなく、あらゆる証拠を並べて、見えていない部分を論理的に推測する手法です。

まず、考えることは、今の相場の価格形成は、何を元になされているのか、ということです。トランプ大統領に決まった時は、デメリットに焦点が当たっていたから、相場は下げました。その後、上昇に転じたのは、メリットに焦点が当たり始めたからです。これは、事実です。この「メリット」をどこまで織り込んでいるのか。そこをスマートゲスします。

そのメリットとしては、財政政策の拡大、税制改革により企業利益の底上げ、保護主義で米国内産業の保護、これら相まっての米経済成長の促進、インフレ期待の上昇(で金利が正常な状態に上がる=物が売れる、利上げもできる)、強い米国が復活する、ということが挙げられています。

これらは、事実でしょうか。これらは、期待です。つまり、今の相場は、「期待」に支えられた相場ということになります。ならば、この相場が続くかどうかを見極めるには、この「期待」が現実になる可能性がどれくらいあるかを見れば良いことになります。

では、これらの期待が現実になる可能性はどれくらいかを見てみましょう。

まず、今回は、上院も下院も共和党ということで、大統領が政策を推進しやすいという声があります。ですが、共和党の中身をよく見てみると、中は分裂していて、一枚岩ではありません。特に重鎮がトランプ氏を支持していないことが気になります。また、トランプ氏は、メキシコとの国境に建設する壁や、国内に橋や空港、高速道路を建築すると財政政策を述べていますが、すでに、国境の壁など、その実現性は疑問視されています。

そして、トランプ氏は政治家ではありません。経済に関しても専門家ではありません。なので、側近に専門家を揃え、彼らのアドバイスを仰ぐことになります。彼の政権移行チームに入った人の一人に、ピーター・ティールがいます。オンライン決済サービス「ペイパル」の創業者の一人で、Facebookに出資して巨額の利益を得たりして話題を集めた、元々は、シリコンバレーで活躍するビジネスマン、起業家であり投資家です。昨年『zero to one」を上梓し、日本にも来日し、講演しました。

彼はゼロから1を生み出すような、革新的なベンチャーを生むためには、次の3つの問いを考え抜かなければならないと言っています。

「何に価値があるのか?」
「あなたに何ができるのか?」
「誰もやっていないことは何か?」

この、最後の、「誰もやっていないこと」をやることに意義があるとする彼がチームに入ったことで、トランプ氏の今後の政策が余計見えにくくなった、つまり、「何をするか予測がつかない」という声も出ています。実際、大統領に当選してからは、「イメージの書き換え」にフォーカスしていて、政策については発言を控えているように見え、各政策の具体策や詳細はまだ明確に出されていません。

今の状況を表すと、「不確実性が高まっている」ということになります。いつもお伝えしていますが、市場は『不確実性』を一番嫌います。良い経済指標が出たとしても、その局面での「良い指標」が、逆に中央銀行の次の行動を読めなくさせてしまうなどの場合、市場は下げて反応します。

現在、起こっていることは、どうでしょうか。

不確実性が高まっています。
なのに、市場は上げています。

これだけでも、この相場の継続性には??が付くことがわかります。

では、どこで反落に転じるか? それは、期待が裏切られた時です。どんな形で市場が「裏切られた」と市場が判断するかわかりませんが、トランプ次期大統領が、「言ったことが全て実行できるとは限らない」ことを考えると、「公約、実現できないんだ」と市場に認識された時、または、「期待と異なる方向の政策に傾いた」とみなされた時、となるかと思います。

こんな時、長期安定投資家として、何をすべきでしょうか。

長期安定投資家としてすべきこと

この局面で、長期安定投資家としてすべきことは、これまで通り、ドルコスト平均法で自分の決めた基本配分でのポートフォリオ運用をしっかり続けることです。10年以上の長期にわたって、ドルコスト平均法と、上がり下がりのタイミングを取って投資した時の投資結果を比較した研究がありますが、バブル発生の直前に一気に投入した時を除いて、ドルコスト平均法の結果の方が優っているという結果が出ています。

大統領選前、クライアントは恐怖心に突き動かされて投資判断を下していると答えた投資アドバイザーは実に76%に上ったと言います。今の相場が恐怖心から解放された人々の安堵がもたらす相場だとすれば、「行き過ぎ」であり「ファンダメンタルズ」からかけ離れていく方向性だということが、見えてきます。

今、長期安定投資家の私たちがすることは、次の3つです。

1) これまで通りの自分のリスク許容度に合ったポートフォリオ配分を保ち、ドルコスト平均法を続けつつ、
2) 基本配分の変更の必要性を探るため、トランプ大統領の下で、米国経済と世界経済、そして企業業績のファンダメンタルズ、お金の流れ、がどのように変わるかを見極め、
3) 必要であれば、基本ポートフォリオ配分を見直す

今の段階では、2)の見極めをするには情報不足です。自体が明らかになるまでは、安易に市場の反応に反応せず、1)を継続することです。くれぐれも、自分はどの時間軸で勝負しているのかをしっかり自覚して、その時間軸に合った戦略をとってくださいね。

時間軸と戦略がバラバラだと、失敗します。

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