何かを伝えたい!と思って話し始めたのに、途中で自分が何を話してるのか、分からなくなってしまった、なんてことはありませんか?
どうしたら人にうまく伝えられるのか、自分の頭の中にあるものを、言葉にするにはどうしたらいいのか?その問題に対する、解決策を提示してているのが本書です。
梅田 悟司
1979年生まれ。大学院在学中にレコード会社を起業後、電通へ入社。
マーケティングプランナーを経て、コピーライターとして活躍。
直近の有名な仕事は、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」アルバイト情報誌「バイトするなら、タウンワーク。」などがある。
本書『「言葉にできる」は武器になる。』は30万部を超えるベストセラーとなった。
本書は、本屋に行くとよく見かける、日々の会話力の向上や、雑談力を上げる方法とは、一線を画す一冊です。
「一生モノの言葉にできる力」と伝えている通り、この能力は、一朝一夕に手に入るモノではありません。
トレーニングを重ねることで段々と、自分の中から言葉が溢れてくるようになる、その方法が具体的に示されています。
自分の思いを人に伝えたい。
言葉が詰まる、スラスラ出てこない、などのお悩みを抱えている方にとっては必見の1冊です。
思っていることを自在に話す術を得たとしても、「何だか嘘っぽい」「口先だけな気がする」という印象をもたれる人と、言葉は少なくても「この人のことは信用できる」「なんだか惹かれる」という印象をもたれる人がいます。
この2人の違いを生み出しているものは何なのか?
それが「内なる言葉」と「外なる言葉」です。
「内なる言葉」とは、
”無意識のうちに頭に浮かぶ感情や、自分自身と会話することで、考えを深めるために用いている言葉”
つまり、自己対話の中で培われる、言葉のことを指しています。
「外なる言葉」とは、
”自分の意見や思いに、言葉という形を与えたもので、(略)相手との意思疎通を行う道具である”
つまり、私たちが一般的に使っている「言葉」そのものを指しています。
言葉の重みは、内なる言葉と向き合うことによって、自らの思考をいかに広げ、深められたかによって変わっています。
気持ちと言葉が一致していなければ、相手に伝わる言葉は出てきません。
言葉が「グサッと」刺さる人と、そうでない人との違いとは、その人自身の想いの深さや、広さにあるのですね。
では、「内なる言葉」を深めるには、どうしたら良いのでしょうか。
本書ではかなり詳細に、内なる言葉を育てるステップについて記載があるのですが、本書評では細かい説明を省き、簡潔にお伝えしていきます。
ここでの「思ったこと」とは、自分の思考を深めたいテーマのことで、本書では、
「自分が一番大事にしているものは何か」
「今後、どう成長していきたいか」
などが紹介されています。
私自身は「この仕事を行うことは自分にとってどのような意味があるのか?」といったテーマについて、考えてみました。
テーマに対して、A4の紙に自分が思いついたことを、ひとつずつ書いていきます。
書き出す目安は「頭が空っぽになる」までです。A4用紙1枚につき、ひとつの考えを書いていきます。
先ほどの「この仕事を行うことは自分にとってどのような意味があるのか?」という例であれば、このように記載していきます。
・自己実現の手段のひとつ
・キャリアを伸ばすため
・自分らしく生きる
ステップ1にて書き出した言葉について、「なぜ」「それで」「本当に」という質問を投げて深掘りをしていきます。
「なぜ」 :なぜ自分がそのように考えるのか、自分の考えをより深めていくための質問
「それで」 :それで結局何が言いたいのか、考えを前に進めるための質問
「本当に?」:自分が考えていることに対して疑問を投げかけ、本心から思っているのかを確かめるための質問
「自己実現の手段のひとつ」という答えに対して「それで?」と質問を与えてます。
私の場合だと、「スキルを伸ばして更に、自己実現を拡大させていく」という答えが出てきました。
このようにして思考を深めていくと、頭の中で考えていた想いの「解像度」が上がり、より正確に自分の思いを把握できるようになっていきます。
”気持ちをはっきり認識できた時、言葉は自然と強くなる” とあるのですが、自分は仕事を単なる「労働」だとは考えておらず、今の仕事を通して更なる自己実現と、スキルを伸ばすことを兼ねている、と理解できるようになってきます。
「解像度」とはイラストにすると、このように表現されます。質問を投げかけることで、解像が上がっていくのが実感できるかと思います。
ステップ1、2で書いた紙を、同じ仲間同士に分類します。
分類する時のコツとしては、客観的な視点を持って行い、3回は見直しをする、とのことです。
分類が終わったら、そのグループに名前をつけます。
名前を与えることで、思考をより明確化することができます。
先ほど例に挙げたテーマ「この仕事を行うことは自分にとってどのような意味があるのか?」であれば、「自分がどう在りたいか」といった答えが多いとわかりました。
それならば、「その仕事を受け取った相手はどうなのか」といった箇所について考えていきます。
こうすることで、偏った思考から相手、会社、社会にどのように貢献できるか、思考の幅が一気に広がっていきます。
ステップ1〜4までが完了したら、一旦時間を置きます。
これは、自分の視野が狭くなってしまう事を避け、冷静な目線で新たに自分の思考を見つめ直すためです。
時間を置く目安としては、2〜3日程度が良いとのことです。
2〜3日経過したら、2回目に取りかかります。1回目はステップ1〜4を、2回目はステップ6〜7を行い、2回で1セットとして考えていきます。
真逆を考えるとは「自分の常識や先入観から抜け出す」ためで、強制的に別の世界へと、考えを広げていきます。
では実際に、真逆を考えるとは何なのでしょうか?
①否定としての真逆 できる ⇆ できない、 やりたい ⇆ やりたくない
②意味としての真逆 やりたい ⇆ やらなければならない、 希望 ⇆ 不安
③人称としての真逆 私 ⇆ 相手 ⇆ 第三者、 主観 ⇆ 客観
ここでもやはり手を動かし、書き出すことで、内なる言葉を磨くトレーニングをしていきます。
ステップ7は特定の誰かを思い浮かべ、その人になりきって、「その人だったら、どのように考えるか」を想定してみます。
想像力を働かせ、自分の視点にない複眼的な視点で、物事を捉えられるようになっていきます。
この複眼思考を行うことで、自分自身の内なる言葉に、自分以外の内なる言葉が付加され、より広く物事を考えられるようになっていくそうです。
全てのステップを実際にやってみて、正直とても時間がかかりました。
全部で4時間くらいかかったでしょうか?
その代わり、自分の中での内なる言葉は深みを増し、解像度が上がった実感がありました。
一度実行してみると、日常生活の中でも、自分がなぜそのように考えるのか?あの人ならどうやって考えるか?などの質問が自分の頭に浮かんでくる機会が増えました。
私は、そうやって自分に質問したテーマに沿って、人に伝えることを意識して、独り言のように話しながら歩く、という事をこの1ヶ月間続けています。
頭の中だけで考え続けると、どうしても言葉が断片的になり、単語だけは出てくるけれど、うまく話すことができません。
続けることで、少しずつ、自分の言いたいことが、話せるようになってきた気がします。
これからは、より一層「個」が立つ時代になると私は考えています。
その中で、自分の思いを人に伝えられる能力は、益々重要なスキルになってきます。
自分の思いを伝える機会が増えたとしても、私が避けたいと思ったのは、キレイに言葉だけを並べて、宙を舞うような話になっていないか、ということでした。
素敵な言葉を話しても、相手に伝わらない言葉を発したくない、と思っていました。
本書は、私にとって「相手に伝わらない言葉」とは何なのかを、具体的に説明してくれるものでした。
この本に出逢い、言葉を強くするには「内なる言葉」を育てることが重要であることが分かりました。
そして、書評として皆さんに共有することで、筆者の考えが深く理解できたことに、非常に感謝しています。
その人が語る言葉が、「本心」「本音」であり、深い思考の上にあるとき、より多くの人に伝わる話ができるのだと思います。
私は本書で学んだ「内なる言葉」を育て、人に伝える力を伸ばし、ミッションに生きていきたいと思います。
筆者の言葉は、ひとつ一つに力がみなぎっています。
活字からでもそれが伝わってくるということは、普段から内なる言葉を育てることに、力を注いている証なのだと感じました。
簡単に培われる力ではなさそうですが、人に伝わる言葉を話したい、と思われている皆さんは、ぜひ挑戦してみてください。