こんにちは!ミッション・ミッケ人生デザイン研究所、研究員の斉藤です。
確定拠出年金法の制度改正に伴い、個人型確定拠出年金は「iDeCo(イデコ)」という愛称で呼ばれるようになりました。昨年終わりごろから各金融機関では広告宣伝に力を入れたり、メディアでの特集も組まれ「最強の資産形成手段」と数多く取り上げられ注目を集めています。
2017年1月から、加入対象者が拡大され、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は現役世代のほとんどをカバーする事になりました。みなさんの中にも新たに加入した方や、検討中の方も多い事と思います。
実施主体である国民年金基金連合会によると、新規加入者は12月時点と比較して7万人強の増加。2月時点の全体の加入者は38万人に迫る勢いで、伸び率も過去最高を更新しているとの事。一方では、あるシンクタンクの調査によると、利用希望者は約20%にとどまり認知度も低いという調査結果を発表しています。
私は、生命保険会社でマネージャーとしてFPを統括しています。世の中の『老後の資産形成に個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を利用しないと損!』という雰囲気の中、現場では多くのクライアントから「始めた方が良いですか?」と管下のコンサルタントが個別相談を受けています。
また、企業の従業員や公務員の方に向けた個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に関するセミナーも、多方面から依頼を受けて行っていますが、「本当に始めてしまって良いのか不安」「良い話ばかりで怪しく感じる」という声も伺っています。
集まってくるリアルな声に接している中で、不安や不信の背景に何があるのか、検討している人たち自身も、気づいていない本質が見えてきました。これだけ話題の一大キャンペーンにも関わらず、国民の認知や興味が今一つなのは何故なのか解説します。
公的年金を補うための、私的年金のひとつである、確定拠出年金制度の成り立ちを把握しながら紐解いていきましょう。
2001年に導入された「確定拠出年金」は、「DC」「日本版401k」など、メディアによって呼び方が違ったりする事が、わかりにくい原因の一つです。米国の内国歳入法401条(k)項に基づく制度を、参考にしたため「日本版401k」と呼ばれ、日経新聞でも、2~3年前までは多用されていました。
しかし日本の確定拠出年金制度は、米国とはそもそもの成り立ち方に、大きな違いがあります。米国は、個人が自発的にリタイアメントプランニングをする際に、任意に使える口座として発展しました。
将来のために、積立をしようと思う人向けの制度として、ごく一般の人にも広く受け入れられたのには理由があります。米国では学生の頃から投資の勉強をしている事と、個人納税者は全員、確定申告をする必要がある制度のおかげです。「投資をしながら所得税が繰延べできる」という価値を理解できる人が多く、401kプランは急速に成長を遂げました。
日本では個人型確定拠出年金は、米国とほぼ同じ目的とメリットがあるにも関わらず、何故かまったくと言って良いほど普及しませんでした。日本ではある理由があって企業型が主流となって広がっていくのです。。
以前から企業には確定給付企業年金(DB)という、従業員が受け取る「給付額」があらかじめ約束されている企業年金制度がありました。会社が運用の責任を負い、運用結果が悪ければ、企業が不足分を穴埋めしていました。
1990年代に、この積立金不足が企業経営を、長期にわたって圧迫する事が表面化し社会問題となったのです。企業年金制度の破綻危機が懸念された事で、その受け皿として生まれたのが、我が国の確定拠出年金制度なのです。
英語の頭文字を取ってDB(Defined Benefit)と対比してDC(Defined Contribution)と呼ばれました。なので、この呼び方をする場合は、もともと企業年金の事を指しています。
個人型との決定的な違いは、企業型の場合、勤務先である企業が掛金を負担する事と、個人が加入するかどうかを選択するのではないという事です。
入社した会社に制度があれば、自動的に加入者となり、従業員は、個人別管理資産の運用指図を行うだけです。自分でお金を払うわけではないので、多くの人があまり関心をもっていません。
DBからDCに移行した企業の従業員も「会社から提出しろと言われた書類に署名・捺印した記憶はあるけど、あまり理解していない」という声を良く聞きました。
退職金を自分の手で運用する事になりましたが、喜んだ人も、反対に危機感を感じた人もあまりいませんでした。
企業にとっても、騒がれないうちにサクッと移行できれば、これ以上マイナスが膨らまず都合が良かったのかも知れません。
企業型に比べ個人型の加入者は、増加傾向とは言え38万人弱と、普及率は制度発足後16年経った今でもぱっとしません。急に個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の広告が増え、新しく生まれた制度と勘違いされている方もいますが、企業型と同じく2001年からある制度です。
今回の制度改正は、「企業年金のある会社員」「専業主婦(3号被保険者)」「公務員」などの、今まで加入できなかったほぼ全ての人(一部の方を除いて)が、加入できるようになったことです。
皆さんも目にしているように、知っていれば必ず加入したくなるような、強力で解かりやすいメリットが昔からあるのに、なぜ加入者は増えなかったのでしょうか? 対象者の1%にも満たない加入率は、殆どの人が加入しておらず、世の中に存在しないのと同じだと言いたくなります。
その理由は、単純に知られていなかったからです。何故なら普及啓蒙する人がいなかったから。簡単に言うと営業マンがいないのです。私たちは、誰でもニーズに合わせて、少しでも有利な制度から、効率的に活用したいと思うものです。そしてマネープランは、個人個人のニーズや手段や商品が多岐にわたる為、個人で決めるのは難しい面もあり、情報の伝達者が必要なのです。
しかし数ある制度や金融商品の中でも、こんな素晴らしい制度を広める人がいないのは、あまりにも金融機関の利益が少ないからです。人件費をまかなう事が出ないのです。 今後は優良顧客の囲い込みと思って、金融機関がどれだけ「損して得取れ」的な、営業を展開するかに注目です。
【2017年4月追記】運営管理機関である金融機関等の対応は、コールセンターかwebが多いようです。やはり対面で取り扱う人件費のコストはかけられないのでしょう。しかし申込み書類の作成だけでも思った以上に煩雑で、不備を解消するために何度も郵送で往復する事もあり、途中で面倒になり投げ出す人もいるようです。
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の情報は、雑誌や新聞、webページなど、非常に増えています。そのような記事や本をご覧になって、少し難しいなと感じる部分もあると思います。
制度全体の図解や、将来に向かってのメリット、デメリットなどを、うまくまとめて解説している記事も多く、どの記事も要点は大体同じですが、その要点を得るだけでもややこしい部分もあります。
難しさの原因は、この制度は、税金や社会保険の基礎知識を持った上で、個人個人の状況の特性を考慮して、検討する必要があるからです。それに加えて加入後は、投資の事まで考える必要が出てきます。
私は、この難しくややこしい事が、普及しない原因だと当初から思っていましたので、専門家がわかりやすく説明する事が一番大事だと思っていました。しかし冒頭に挙げたようにクライアントと接し、コンサルティングする事で、それより大事な本当の理由がわかりました。
それは世の中競うように、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を『最強の老後資産形成』と発信し、MAXパワーで節税メリットを訴求しているからです。どういうことかと言うと、何のために資産形成をするのかという「必要性」ではなく、あまりにも「イデコありき」、「節税ありき」になってしまったのです。
ライフプランニングを行うと、誰にでも、老後に向けての資産形成は必要な事がわかります。その方法が色々ある中で、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」を活用する事も視野に入れて、最後にメリット・デメリットを冷静に分析する必要があるのです。
この順序を飛ばし、「iDeCoは最後の切り札です」的なメリットの押し売りがされました。個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は節税する為のツールではなく、節税効果も得られる資産形成手段の一つ、という当たり前の事忘れさせました。
それが怪しさや不信感を醸し出したのだと思います。どんな人生を歩みたいか?何のために資産を構築したいかを考える事が、何に投資するか?どんなやり方をするか?を考えるより最初なのです。
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の加入者は順調に増えてはいるが、まだまだ興味や認知度は低い。企業型確定拠出年金の加入者が日本では大半を占めるが、正しい事を正しいやり方で、実践する事を教えてくれる人が少なかったため、日本の確定拠出年金は無関心な状態でここまで来てしまった。
それは昨年までの、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」をほとんど世の中に存在しないほど、認知されないことにも影響を与えている。
制度改正に伴い、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」の素晴らしさが、突然に大量発信されたが、必要性の背景である「何のために資産形成するのか?」は置き去りにされたため、メリットばかりが強調され不信感や不安感を与えるようになってしまった。
ブームに乗り遅れまいと、焦って加入申込みをする前に、本当に自分にあったライフプランが何か、広い視野で、情報収集することが必須です。どんな人生を歩みたいかは、最高の価値観を出すことでより明確になります。ぜひ下記の無料メールコーチング講座からお申込み下さい。
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