こんにちは。ミッション・ミッケ人生デザイン研究所、研究員の井上翔太です。
昨日(2016年11月9日)にアメリカ大統領選挙が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏が当選確実となりました。開票当日、序盤はヒラリー・クリントン候補が優勢と伝えられていましたが、後半はトランプ氏の獲得票数が予想以上に伸び大逆転の勝利となりました。
トランプ氏は歯に衣着せぬ過激な発言で幾度となく物議を醸し出し、大統領としての資質を問われ「トランプリスク」とまで評されていましたが、実際に大統領になることで世界中で更なる混乱が起きることが予想されています。
トランプ大統領誕生に真っ先に反応したのは金融市場です。その値動きを考察しながら、この波乱相場を乗り切る方法をお話ししたいと思います。
11/2から当選確実となった昨日(11/9)までの各資産クラスの代表的なパッシブファンド値動きを以下の図に纏めてみました。棒グラフが上に振れているのは、そのファンドの基準価格が上がったことを指しています(例:11/8の外国株式のパッシブファンドは2.4%値上がりした、という意味です)。下に振れているのは、その逆です。
2016年米国大統領選挙時の各資産クラスの値動き(東証)
11/2にアメリカでトランプ氏が優勢であることが伝えられると、国内債券を除く全ての資産クラスが値下がりしました。それ以降も、国内外の株式、そして外国債券(先進国)のファンドは大きくの値が動きましたが、国内債券および金は安定した値動きになっており、トランプ氏の当選が確実となった11/9においては、むしろ値上がりしています。
今年発生した世界中に影響を与えた出来事として、今年6月の英国のEU離脱(通称:Brexit)が挙げられます。そちらも同じように図に纏めてみると面白いことが起きました。
2016年英国EU離脱時の各資産クラスの値動き(東証)
実際のEU離脱が決定した6/24の値動き(赤枠)を見てみると、なんと!国内債券と金のみ値上がりして、他の資産クラスは値下がりするというトランプ大統領誕生の際と全く同じ値動きになっています。
この2大イベントに共通して起きているこの国内債券と金の値動きこそ、安定した資産を築くのに重要なポイントだと私は考えています。
以前の記事で、投資には「資産クラス間の相関関数」を意識したポートフォリオを作ることが、投資初心者にも簡単にできるバランスの良い資産を構築する方法だとお伝えしましました。今回のこの値動きは、そちらを実証しています。
国内債券は、最近ではマイナス金利の影響により利回りが下がる一方(価格は上昇)なので、投資先として魅力が無い、むしろ金融引き締め(利上げ)時の暴落のリスクが強まったことで敬遠されがちな状況となっていますが、このような金融不安時におけるポートフォリオの防御機能は失っていません。今回の場合で言うと、国内株式100万円を持っているAさんは、95万4000円になってしまいますが、国内株式50万・国内債券50万を持っているBさんは97万7500円となります。わずかの差に見えますが、長期で資産を構築する(複利で殖やしていく)という観点から言えば決して小さい金額ではないんですね。
また、金は利回りが付かないので、その点では現金で保有しているのと変わりが無く、特に相場が順調な時は機会損失とみなされこちらも敬遠されがちですが、このような有事の時にはポートフォリオを守る役割を果たすことをこの2例が実証しています。
つまり、ポートフォリオの中に相関のある資産(≒値動きが異なる)をバランスよく組み入れることが、波乱相場でもあたなの資産を守り、長期的な資産形成につながるのだと思っています。
利回りの追求という観点だけではなく、順調相場そして波乱相場両方においても資産を構築していくためには、相関を意識した資産クラスを組み入れたポートフォリオを持つことが、安全且つ着実に資産を構築するベストな方法の1つだと思います。
次のステップとしては、1つの資産クラスの中にも相関を持たせるという方法があります。それが実現できると更なる分散効果が発揮され、もっと進化したポートフォリオの構築が可能になりますが、そちらはまた次回にお話ししたいと思います。
また、長期的な資産形成(長期安定投資)の基本的な考え方や、世界の他の市場の反応はコチラの記事でも解説していますので、あわせてご覧になってくださいね。