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2017
04月04日

老後資金の不安?「いや、もっと近い将来も不安です」

こんにちは!ミッション・ミッケ人生デザイン研究所、研究員の斉藤です。
2016年12月に年金額改定ルールの見直しなどが盛り込まれた、年金制度改革法が成立しました。賃金に合わせて年金額を引き下げるルールが強化されたため、メディアからのニュースではいつも通り(?)「物価が上がっても年金支給額が減るのでは」とネガティブな面が強調されています。
それを目にした人たちの間では「日本の年金制度は大丈夫なのか?」「将来的に制度が破綻する可能性はどうなのか?」という以前から言われている不安の声が再燃しています。私は日常よく老後資金について相談を受けますが、若い方の中には「我々の老後には年金はもらえない」と決めつけて国民年金の保険料を払っていないという方もいらっしゃいます。
国民年金の未納率が約40%であることの報道も破綻懸念を助長しています。しかしこれは自営業者など第1号被保険者に限った話であり、サラリーマンなど第2号被保険者は給与天引きのため、納付率はほぼ100%です。全体で見た未納率は5%以下であり、年金財政に大きな影響を与えない事はあまり知られていません。
ある世論調査では、法改正を受けた今後の年金制度に「安心」と答えた人は1割に満たず、9割弱の人が「不安」と答えるなど、年金財政について信頼は高まるどころか、国民の老後に対する不安は収まる気配はありません。
今回の法律改正も、マクロ経済スライドの強化による「カット」ばかりが強調されましたが、実態は「特例水準」として本来より多く支払われていたもの(その額9兆円超‼)を、調整するものであり、拡充されたポジティブな面は、あまりフォーカスされていません。改革案は、制度を恒久的に維持するために必要な策を講じており、スムーズに実現していけば、それほど悲観的になる必要はないと私は考えています。
当研究所では資産形成をしていくために、金融リテラシーを身につける事を重視しています。再三に渡り「理解できないものに投資はしない」と強調していますが、社会保険も同じです。生涯で多額の保険料を納めますが、制度も複雑のため、不理解による誤解や不安を招いています。本日は最低限知っておくべき年金制度についてお伝えします。

最新の制度改革のポイント

先に上記に挙げた年金額改定以外の、今回拡充された面を整理しておきます。

厚生年金の適用者拡大

2016年10月から大企業における、短時間労働者への被用者保険の適用拡大がされています。いわゆる新たに「106万円の壁」が出来たと話題になった件です。これを500人以下の起業にも、労使合意に基づき拡大させるものです。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入範囲拡大

これにより、第3号被保険者や企業年金加入者、公務員や私学教員なども加入可能となりました。iDeCOは新たな金融商品の発売とよく勘違いされますが、年金制度改革の一環なのです。

受給期間を10年に短縮

老齢年金の受給資格を得るために必要な保険料納付済期間が、25年から10年に短縮されます。また2019年4月からは、第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除もされます。こういった少しでも無年金者を減らそうという施策により、年金受給者は増加します。

年期積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンス強化

2017年10月にGPIFの組織の見直しが行われます。意思決定の権限や責任が、理事長一人に集中する「独任制」を、専門家も含めた経営委員会が「合議制」で方針を決定する形に変更するものです。組織内のPDCAサイクルが回りやすくなり、長期的な運用成果に寄与すると期待されています。
これは私たちのように長期安定投資をしている個人投資家とっては嬉しい事です。GPIFの基本ポートフォリオ等の重要方針や、運用方法の決定に至るプロセスの透明性が高まる事で、参考にできる情報がよりディスクローズされるはずだからです。
ちなみに2015年の5.3兆円の損失を「第2の消えた年金問題だ」と躍起になって批判している政治家もいましたが、長期で見れば好成績です。しかも年金給付額に占める積立金の割合は1割程度で、もし運用額の全額がなくなっても年金制度が破綻するわけではないのです。

年金は老後のためだけではない

ここまでの話は老齢年金についての話でした。実は人生デザイン構築学校で資産形成を学ぶと、老後の年金はあってもなくても気にならなくなります。自分の老後の生活に対する不安や怖れに、駆り立てられて貯蓄や投資を行うのではないので、そもそものスタート地点が違います。
皆さんには、いざという時のためのリスクマネジメントという視点で、我が国の公的年金制度を知っておいてほしいと思います。公的年金制度(国民年金・厚生年金)に加入していると、老齢年金以外に自分や家族を守るための保障がついています。遺族年金と障害年金というもので、簡単に知っておくべきポイントをお伝えします。
余談ですが、皆さんは民間の生命保険会社から保険を加入する際、まず国がいくら保障してくれているか算出しましたか?自分の家族を守るのに必要だなと思った金額から、国が保障してくれる額を差し引いた金額が、生命保険にかける保険金の額です。これは無駄な保険料を、生命保険会社に払わない為に、絶対に必要な作業ですのでチェックしてみてください。

死亡により支給される遺族年金

公的年金制度の加入者または年金受給者などが死亡した場合、遺族に支給される年金が遺族年金です。亡くなられた方に生計を維持されていたご家族が、安定した生活を送れるようにすることを目的としています。
基礎年金(国民年金)部分から、ご家族が受け取れる年金額は約78万円で、子が18歳になる年度末までは第1子、第2子が年額224,300円、第3子以降が一人年額74,800円の「子の加算」があります。
これに加え厚生年金部分から、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が、遺族厚生年金として給付されます。ざっくりと年収約500万円で、子供二人のサラリーマンであれば、基礎年金と合算して約170万円の支給が目安となるでしょう。
支給要件や受給期間については遺族基礎年金、遺族厚生年金でそれぞれ異なり、独自の加算もあるので、各家庭で正確に計算する必要がありますが、まずは公的年金は生命保険でもあるという事を理解してください。

疾病やけがによる障害が対象となる障害年金

病気やけがのため、障害を負ってしまった場合、または症状が改善されず今後も見込みがない場合は、その障害状態に応じて障害年金や一時金が支給されます。障害状態になられた方と、ご家族が安定した生活を送れるようにすることを目的としています。
障害年金も基礎年金(国民年金)部分と、厚生年金部分の2階建て構造となっています。基礎年金は、法令で定められた障害等級の1級で約97万円、2級で約78万円の年金が支給されます。子がいる場合は末子が18歳になるまで、遺族年金と同額の「子の加算」があります。
厚生年金については、1級で報酬比例部分の1.25倍、2級および3級で報酬比例部分相当額です。1級、2級は、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる時に、224,300円の加給年金が支給されます。
障害年金の申請には、申立書の作成や専門知識を要する、多くの書類提出が必要となります。専門家に相談する事がとても重要になります。

まとめ

・かたよったメディアの情報に踊らされずに、事実からメリット・デメリット両方を把握し、真実を知る。
・日本の年金制度は老後の貯蓄だけではなく、生命保険と傷害保険もついている。
・死亡時は遺族年金、病気やけがによる障害年金についての最低限の知識を知っておく。
日本の公的年金制度は非常に複雑な制度ですが、いざという時に、とても手厚い保障が提供されており、「基本的人権の尊重は守られている」という事を知っておく事が大切です。なぜなら無用な不安に駆られて、自分のリスク許容度を見誤り、健全な資産形成に進めなくなる事を防げるからです。こういったリテラシーを身につける事で、より自分らしい人生を歩み、世の中に最高の価値を提供するための、資産形成戦略に役立てて下さい。

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