こんにちは!ミッション・ミッケ人生デザイン研究所、研究員の斉藤です。
2週に渡って今注目の、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」についてお伝えしてきました。 最終回はデメリットと言われている事から、本当のメリットと制度の本質に、迫ります。
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個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」が何故注目されているのかと言えば、普通の公的年金や資産運用では、得られないメリットがありそうだからです。
雑誌やネットの記事を見ると、どれもメリットだけではなく、デメリットもあると伝えています。そして「個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」のメリット・デメリット」はどの記事でも殆ど同じような内容になっています。
私はこれらを、そのまま真に受けないで欲しいと思っています。前回の記事では、メリットと言われている事は、全ての人に当てはまる訳ではない事を、お伝えしました。それではデメリットと言われている事はどうなのでしょうか?
目次
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」のデメリットとしてよく取り上げられる、以下の3つを検証してみます。
急な傷病により、収入が見込めなくなり、生活費の他、住宅ローンや教育費などの出費に困った時でも、引き出す事は出来ません。この規則は非常に厳格で、「引き出せないからこそ、強制的に貯まるので良い」という向きもありますが、私は安易に「逆にこれはメリットです。」とは言えません。
途中で払えなくなった場合、運用指図者となり掛金をストップすることはできます。しかし経験上、掛金の拠出が厳しくなった場合、そこにある資産を使いたいと思うようになることは時間の問題です。
加入にあたっては、ライフプランを作成し、60歳まで暮らすのに使わない資金が、どれくらいあるか慎重に計算するとともに、リスクマネジメントを考える必要があります。
流動性を失う事での、最大のメリットは他にあります。それはちょっと重い話ですが、自己破産しても財産が残るということです。個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に積み立てたお金は、確定拠出年金法第32条によって、換価不要な資産として定められています。
自己破産しても、その財産は没収されず、老後には受け取ることができる資産として残るのです。これは事業リスクを抱える、多くの個人事業主や経営者にとって、最悪な事態の際には破産対策手段になると私は考えています。
【追記】もちろん事業安定化のためには、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)などの加入を、先に検討することをおススメします。
また個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」も、他の公的年金と同様に保険としての機能があります。一定の障害状態になった場合には「障害給付金」が、60歳より前でも非課税で支払われます。死亡した場合には「死亡一時金」が遺族に支払われます。
共通の手数料は、国民年金基金連合会に毎月103円。事務委託先金融機関に毎月64円。これに加えて、選択する運営管理機関(金融機関)により、毎月0~400円程度の口座管理手数料が発生する為、年間合計で約2,000円~7000円程のコストがかかります。
ポイントは預かり資産の●●%ではなく、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」はどれだけ預けても一定額の手数料だという事です。積立額が少額なうちは、占める手数料は割高になりますが、残高が増えれば増えるほど、手数料は割安になっていくという事になります。
ポータビリティの問題が解決され、転職しても独立起業しても専業主婦になっても、積立続けることが可能になった事で、もはやこの手数料体系は、メリットと言えるでしょう。何故なら多くの金融商品は、定額ではなく定率でかかる為、資産が増えれば増えるほど、率は一定でもコストの絶対額は増加するからです。
運用次第で将来受け取る金額が変動する。すなわち元本割れする可能性があることを、デメリットと表現しています。このデメリットは避けるためには、元本保証のある定期預金も選択できるなどと紹介されています。
しかし、そもそも変動リスクを許容できないライフプランの人は、iDeCoに加入するべきではありません。定期預金のリターンでは、コスト割れする可能性も高く、長期に流動性を失うトレードオフとして、税制のメリットがあるとしても、割に合いません。
個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」は加入すると、自動的に長期の運用で、毎月定額を投資する「ドルコスト平均法」となります。人生デザイン構築学校でも推奨している「長期安定投資家」にとって、この制度を利用し、投資信託などの金融商品を購入できる事は、メリット以外の何物でもありません。
ひとつ気がかりな事があります。あまり知られていない不確実な要素として、「特別法人税」というものがあります。特徴は積立金全額に対して年間1.173%の資産課税が、確定拠出年金には課されているのですが、現在は2017年3月まで凍結されています。
今まで何度も凍結期間が延長されており、銀行預金金利がこの税率を超えない限り、凍結解除はされないという見解もあります。しかし何の保証も存在せず、将来的にどうなるかは未知数です。
ちなみにボリュームゾーンである、所得税+住民税が30%の税率の人の所得控除を、複利で計算して年利を出してみました。20年では1.79%、30年運用すると1.19%のリターンと同じ効果がありますが、もしこの税金が課税されると、その時点から拠出時の全額所得控除のメリットは長期で運用するほど相殺されていきます。
30年だと、ほぼ所得控除の税制メリットからのリターンは消滅します。加入期間が長くなる若年層ほど、複利の効果は低下します。また先が長いほど凍結解除の不確実性もあるということなので、焦って加入せず、せめて来年の凍結延長だけは見極めたいところです。
【追記】平成29年度の税制改正でも、複数の省庁から、撤廃の要請事項として挙げられていた特別法人税ですが、撤廃ではなく平成31年度末まで3年間延長されることになりました。将来どうなるかは今のところ未知数です。凍結解除されるまでの間に、税率1.173%以上の利回りで安定的に運用できる、金融リテラシーを身に着けることを目指してください。
公的年金の補完、老後の資産形成を目的とするiDeCoは、積み立てた資金を加入者の責任で運用するものです。ここが他の年金制度と大きく違う特徴で、運用リスクは加入者が負うため、「自己責任型の年金」と呼ばれます。これをデメリットと言う人もいます。
シリーズ初回にお伝えしたように、厚生年金基金や国民年金基金には膨大な積立金の不足が生じてします。この不足を穴埋めするのは、だれでしょうか?
「これからの世代みんなで」ということになるでしょう。みんなのサイフは、みんなで補うのです。
将来の年金が不安な要素は、ここにあります。自分たちがもらう時には少子化で、支える人も減ることがわかっています。企業の確定給付年金も、給付される事が確定しているのではなく、給付額の計算の仕方が確定しているだけの、みんなのサイフで運用しています。
企業が倒産すればもらえない事もあると、JALの一件で私たちは気付きました。今の時代であれば、これはどんな企業でも起こり得る事態と言えます。
一方、iDeCoの場合は、拠出された保険料は個人単位で管理されます。他の人の運用が失敗したからといって、その責任が回って来ることはありません。破綻のリスクも限りなく低いと言えるでしょう。そんな自分だけのサイフで資産を作れる事が、最大の安心感となります。
そしてiDeCoを「最強の資産形成手段」とするには、しっかりとした長期安定投資の手法を学ぶことが必要です。まずは自分のリスク許容度を見極め、自分にあった資産配分を戦略的に決める事が、「守りながら増やす」を可能にする資産運用のスタートラインです。
そうして年金口座だけでなく一般講座も含めた資産全体で、しっかりと分散の効いたポートフォリオを構築すれば、自信と愛着を持って資産を健全に育てることが、あなたの現実となります。
・メリットもデメリットも一般論に惑わされず、自分の場合はどうなのだろうと考える事が大事です。自分の最高の価値観を反映した、ライフプランがすべての判断基準となります。
・特別法人税のように、全員がデメリットとなるケースもあり、制度改正のウォッチが必要。
・iDeCoを最強の資産形成手段とする事は、自らの金融リテラシーと適切な運用手法を学ぶ事で、誰でも出来る。
税金や年金の制度の事は、専門家である税理士、社会保険労務士に相談すれば適切な答えが得られるでしょう。また自分のライフプランや拠出可能額も、ファイナンシャルプランナーに相談できます。
しかし投資する商品だけは、自分で勉強して決めないと後悔します。老後の不安をなくすのは、自分自身の意思と行動力です。長期投資に「たまたまラッキー」はありません。時間を味方につけて、最強の老後資金作りを、ぜひ一緒に学んで行きましょう。!
企業型DCから個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」への移換手続きが気になる方は、必見の記事がこちら。
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