『米利上げを受けた今後の運用戦略』

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米国が、ようやく利上げに踏み切りました。1216日のFOMC(米連邦準備制度理事会)で、政策金利(フェデラルファンド金利、通称FF金利と呼ばれています)の誘導目標を0.25%引き上げました。

前回2006629日に0.25%利上げしてFF誘導金利目標を5.25% (!)にして以来、実に9年ぶりの利上げになります。これは、7年間続けて来た量的緩和の終焉でもあります。

ここ10年で社会人になられた方にとっては、『初体験』になりますね。米国経済にとっても、9年の眠りから覚め、ようやく経済の従来の機能を取り戻した、と言えると思います。

100年の眠りからではないものの、9年というのは、政策担当者にとっては長い月日です。今回の利上げは、「眠れる森の美女」を目覚めさせた王子様のKiss!に相当するでしょう。

空想はここまでにして、では、この利上げは、金融市場や世界の経済動向、そして、私たち投資家にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今後投資戦略を変える必要などは、あるのでしょうか。それが気になるところですよね。

一つずつ見ていきたいと思います。

まず、量的緩和時代に高値をつけた、利回りの高い資産、例えば、ハイ・イールド債や新興国の金融資産、国際商品などから、資金が米国に戻る(資金還流という言い方をします)ことになり、それらの値段が下がります。

ハイ・イールド債とは、リスクが高く、従って利回りも高い国債や社債のこと。ジャンク債(投資不適格の債券)なども含まれ、投資不適格と格付け会社から格付けされている通り、投資で利益を上げるのが難しい資産です。

国際商品とは、原油や金、銀などの、いわゆる実物資産のこと。英語のまま「コモディティ」とも言います。メディアでは、商品市況として値段が伝えられています。

これらの値段が下がるのは、なぜでしょうか。米国にお金を置いておいても、利回りがゼロなので、投資家は少しでも高い利回りを求めて、リスクの高い資産や商品に投資していました。

通常であれば、そんなリスクが高い資産には投資をしない投資家も、「利回りが取れる資産が他にない」ために、投資をしていました。すると、需要が高まって値段は上がります。債券は償還価格が決まっているので、値段が上がると償還価格までの利回りが下がります。

ハイ・イールド債の利回りは、安全資産と言われる米国債の利回りとの格差で表されます(スプレッドと言います)。スプレッドはリスクを表す指標として使われていますので、あたかもリスクが低下したかのように錯覚し(投資先の国や企業の実力は変わらなくても)、ハイ・イールド債に投資を初めてする人も出てきます。こうして、リスクが高い国債や社債に投資する投資家が増えていきました。

それらの投資家が、米国が利回りを上げ、今後も上げていくことになったので、リスクのより低い米国の資産に資金を戻している、ということです。自分の目標とする利回りが取れれば、リスクは低い方がいいですからね。

こういったハイリスク、ハイリターンの資産の価格が、米国への資金還流の動きを受けて、下がります。

さて、米国の資産を買うには、米ドルで払うので米ドルを買わなければなりません。投資家は、新興国などに投資するために米ドル以外で持っていた資金を米ドルに戻します。その結果、今年はドルに上昇圧力がかかり、商品市況も下落しました。

これが、米国の利上げを巡る、大きなお金の流れです。この流れが、利上げに踏み切った昨日も、起きました。米ドル高となり、商品市況も下落しました。

株式市場は、日本も含め、逆に上昇しましたね。これまでの例では、利上げをすると株式市場は下がります。投資をする際に、一番初めにわかっておかなければならない基本として、債券と株式は逆の動きをするということがあります。

これは、プロの投資家は、世界の投資環境のリスクの状況を見て、まず投資配分を決めているということが、前提にあります。投資先は色々ありますが、ざっくり分けると、『債券』か『株式』か、なんですね。

債券に投資をする配分と株式に投資をする配分を、世界の状況を見ながら決めています。世界情勢の安心度が高まると、よりリスクが高く利回りも高い株式に資金を振り向け、リスク度が高まると、利回りが低いけどリスクも低い債券に資金を振り向けます。

特に、先進国の国債は、「安全資産」とか、「無リスク資産」と呼ばれ、その他の「リスク資産」と区別されていますよ。これは、頭に入れておかれると良いと思います。

プロの投資家は、何を買うか、より先に、「どの資産クラスにどれだけ資金を配分するか」という資産配分を決めます。

なので、株と債券は、逆に動く、と理解をしておいてください。

これがわかっている上で、今回の利上げが株式市場に与えた影響を見てみましょう。通常であれば、利上げは株式市場の下落を招きます。過去の米国の利上げ時においても、そうでした。

ですが、今回は、年初から利上げがあるある、と言われていて、延び延びになってしまっていたので、投資家は利上げを織り込んで先に動いてしまっていたんですね。つまり、利上げ後の株式の下落をみて、株式から資金を引き上げてしまっていました(債券に振り向けていました。だから、2015年、債券価格は上昇基調、利回りは低下基調で推移しました)。

なので、今更、反応する必要も理由もなく、逆に、懸念と思っていたものがようやく出てきた、ということで、やれやれと安堵して安心して株式市場に戻ってきた、ということです。こういった現象は、「やれやれ相場」とか「材料出尽くし」の売り、とか、買い、という形でよく報道されていますので、皆さんもよく目にすると思います。

この「材料出尽くし」という言葉の裏には、いつもなら(典型的なパターンでは)、これはネガティブ材料(下がる理由)だけど、今回は買われた理由になったよ、いつもならポジティブ材料(上がる理由)だけど、今回は売られた理由になったよ、という意味が含まれています。ニュースを読むときに、頭に入れておくと良いと思います。

さて、このように、利上げ自体は、すでに織り込まれていたため、市場が動揺する(大きく下げる)ことはなかったですが、焦点は、今後の「利上げのペース」にあります。

当のFRB当局者たちは、今後の政策会合で一回おきに0.25%ずつ利上げをして、16年末には、1.25から1.50%の水準にするとしています。そして、17年も4回、18年は3回か4回の利上げをして、3年後には3.25%にしたいと言っています。

私たち投資家は、これを前提にポートフォリオの配分戦略を考えれば良いのですが、悩ましいのは、FRBは声明で、そのペースを実際に実行するかどうかは「インフレ動向によるよ」と言っていることです。

政策金利を上げるということは、市中の銀行が中央銀行に預ける準備預金と呼ばれる預金につける利率を上げるということです。その結果、市中の銀行は、貸し出す先が見つからなければ、無理に貸さなくても、中央銀行にお金を置いておくという選択が正当化されます。

それだけでなく、市中の銀行も中央銀行にならって、民間企業に貸し出す貸出金利を上げるため、民間企業への貸し出しが減ります。

それは、経済活動を圧迫するので、経済成長への力を削ぐことになります。

なので、利上げというのは、本来、インフレの沈静化、バブル発生を抑えるためだけに行われるものなのですが、今回はインフレは当局の目標の2%を大きく下回っているなかで、実施されました。今後のインフレ予測も、横ばいないし若干の低下が見込まれています。

では、なぜ、利上げをしたのか。それは、FRBは、次の景気後退局面が訪れる前に、「切り札」を手に入れておきたいからです。景気が後退する前に、FRBは利下げを行えば、先ほど説明した市中銀行を通じたからくりと逆のからくりで、経済活動を活性化し、景気の鈍化を避けることができます。

量的緩和を続けていると、切り札が無い状態で景気後退期を迎え、政策の選択肢が縛られてしまうため、それはどうしても避けたいのです。

それに、元々「異次元」=通常ではない政策、として導入した量的緩和ですから、長くは続けていたくありません。

米国発の「金余り状態」を長く続けていて、世界のどこかにバブルを発生させてしまったら、FRBの責任をエコノミスト達にやんやと指摘されるばかりか、後世に残る失策として、歴史上に刻まれてしまいます。

このような理由から、今回は、インフレ上昇の兆候が全く現れていないにも関わらず、利上げを行ったため、今後の利上げのペースを見通す上で、カギになるのは、インフレ動向、ということになります。

つまり、インフレ率が、もっと低下するようであれば、年4回の利上げペースをもっと緩やかにするかもしれません。FRBの予想通り上がれば、計画通りに行くか、ペースが早まることもあるかもしれません。

インフレ率を測る指標は色々あるのですが、FRBが注視しているのは、個人消費支出(PCE)価格指数というもので見るインフレ率です。その中でも、食料品とエネルギーは変動が激しいので、その二つを除いた、コアインフレ率というものを中心に見ています。

それは、直近で1.3%FRB自身が16日に出した見通しは、1年後には1.6%となっていました。これは9月に出された1.7%から、下方修正されています。

インフレ率が、FRBのこの予想より下回って推移したり、逆に上回る兆候が現れたら、利上げペースをもっと緩やかにしたり、もっと早めたりということになるでしょう。

PCEで見るインフレ率は、2016年、注視しておきたい指標です。

では、インフレ率をもっと前に、見通すことは、できないのでしょうか。インフレ率の先行指標として、賃金上昇率があります。賃金が上昇すれば、企業のコストが上がり、価格に反映されます。消費も増えますから需要の面でも価格上昇要因になります。これは、雇用統計の一部として毎月始めに発表されます。これが発表されると、市場が大きく反応するのは、こういった背景があります。

一方で、原油価格はインフレの足を引っ張る要因になりますし、中国経済の失速や、テロなどの地政学リスクが高まっても、米国の経済成長サイクルと利上げペースに影響を与えます。

こういったことを考慮して、FRBは今後の利上げペースを決定していきますが、私たち投資家は、今の所は、FRBの目指す、今後1年間に1.25-1.50%ペースの穏やかな利上げをメインシナリオとし、その通りにいかなかった場合はどうするか、といったセカンドシナリオも考慮しておく必要があります。

2016年には、米国の金融政策以外にも、多くの不確実な要因があります。今は投資家はあまり投資戦略を作る上で考慮していないテロ等の地政学的リスクも、今後は考慮しなければならないでしょう。

米国の9年ぶりの利上げを受けて、2016年、資産を「減らさず」「守り」、堅実に、確実に「増やす」ためにはー。

・市場に大きな動揺が走った時にも大きな被害を被らないようなポートフォリオを構築しておくこと、

・自分の目的・目標・期間に合った、基本となる分散ポートフォリオを作成し、足元の世界の大きな潮流を反映させて2016年前半の配分比率を決めたら、それをしっかり守ること、

・そして、穏やかな心持ちで、何が起こっても、慌てず騒がず、これあ自分に一番最適なポートフォリオ、と自身を持って運用を続けること。

これが、2016年には、これまでに増して益々重要になると考えます。

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